松平春嶽シリーズ 読む順番ガイド——『逸事史補』でたどる幕末
松平春嶽——幕末の「四賢侯」と呼ばれた、福井藩主。
彼が明治になって書き残した手記『逸事史補(いつじしほ)』には、教科書に載らない幕末が記されています。
橋本左内の死。攘夷の勅使。徳川慶喜の涙と、裏切り。そして、春嶽を支えた知恵者たち——。
このシリーズは、その一次史料を一通ずつ読み解いていく物語です。
どうぞ、第1弾から順にお読みください。
松平春嶽とは
松平春嶽(しゅんがく/1828-1890)。名は慶永(よしなが)。
徳川御三卿・田安家に生まれ、数え十一歳で越前福井藩主となりました。
幕末には「政事総裁職」という幕府の最高職に就き、島津斉彬・山内容堂・伊達宗城とともに「四賢侯」と並び称されます。
けれど、このシリーズで描くのは「偉い殿様」の春嶽ではありません。
友の死に泣き、勅使の前で割腹を覚悟し、将軍の涙に騙され、知恵者を二度失った——一人の人間としての春嶽です。
『逸事史補』とは
春嶽が明治の福井で書き残した、自筆の回想録。「歴史の、補い」という意味です。
表の歴史には残らない出来事を、当事者だけが知る肉声で記しています。
本シリーズは、この『逸事史補』の原文(候文)を直接読み解いて執筆しています。
引用はすべて原典から。現代語訳も、当ブログ独自のものです。
読む順番
第1弾 飛雪の朝
安政の大獄——春嶽は、橋本左内の死を、雪の朝に知った。
二十六歳で散った若き俊英と、彼を救えなかった主君の物語。シリーズはここから始まります。
第2弾 勅使の夜
文久三年、深夜の東本願寺。攘夷の勅使を前に、政事総裁職・春嶽は割腹を覚悟した。
「乍不同意同意」——理想を一度殺した夜の記録。
第3弾 諫死の朝
「最早、再び帰らじ」——慶応三年十二月、春嶽は諫死を覚悟して二条城へ馬を駆った。
そこで見たのは、泣く最後の将軍だった。
第4弾 水泡
涙の翌日、慶喜は消えた。「変動あれば報せる」という約束は、水の泡となった。
鳥羽伏見、敵前逃亡——信じすぎた者の悔恨。
第5弾 もう一人の知恵者
坂本龍馬が斬りに来た男——春嶽の知恵袋・横井小楠。
教科書の英雄が、春嶽の手記では脇役だった。知と友情の物語。
第6弾 武田耕雲斎の血
頼った男に、見捨てられた。水戸天狗党を率いた武田耕雲斎は、雪の敦賀で徳川慶喜に討たれる。
「春嶽公なら、寛大にした」——慶喜が漏らした、遅すぎた一言。
第7弾 蹴上の追手
総裁職を投げ捨て、京を発った春嶽。蹴上の坂で聞いた馬蹄の音——追手はいなかった。
だが良心だけは、生涯、彼を追い続けた。
第8弾 小児争ひの如し
たった二文字が、幕府と朝廷を揺るがした。「令徳」か「元治」か——争わずに、幕府の面目を守った春嶽の機知。
だがその裏に、傾いた権威の足音があった。
第9弾 春嶽が見た島津斉彬
茶坊主だった西郷隆盛を「庭口の番人」に抜擢した島津斉彬。その人物眼を、春嶽は本人の口から直接聞いていた。
朋友であり師でもあった男の、知られざる横顔。
今後の予定——全11回
本シリーズは、全11回を予定しています。
第10弾 四百年の声(特別編)
第11弾 明らけく——春嶽、福井で筆を擱いた日(最終回)
新しい回を公開するたび、このページに追記していきます。
どうぞ、また覗きに来てください。
あわせて読みたい——井伊直弼シリーズ
春嶽と井伊直弼——同じ「安政の大獄」を、裁かれた側と、裁いた側から描いた、当ブログのもう一つのシリーズです。
第1弾「飛雪の朝」とあわせて読むと、あの時代が立体的に見えてきます。
出典・参考
・松平慶永『逸事史補』(明治期成立の自筆回想録)
・松平慶民 編『松平春嶽全集 第1巻』(昭和14年)
・人物往来社『幕末維新史料叢書④ 逸事史補・守護職小史』(昭和43年)
引用にあたっては刊本原文と照合し、当ブログ独自に現代語訳しています。